あん

1. 美しい「あん」作りの描写と、五感を刺激する食の魅力

小豆を洗い、炊き上げ、丁寧に練り上げていく「あん」作りの工程が、非常に美しく、そして官能的に描かれています。
映画館に香りが漂ってくるかのような、五感を刺激される描写は、食の魅力を再認識させ、観る人の心を豊かにします。
あんこ好きにはたまらないでしょう。

2. 偏見や差別といった重いテーマへの、温かい眼差し

ハンセン病という、過去に大きな偏見と差別を受けてきた人々が置かれてきた状況を、過剰な演出なく、しかし誠実に描いています。
観る人に、社会の闇と、それによって傷つけられた人々の尊厳について考えさせるきっかけを与えながらも、決して絶望で終わらせず、
人間性の輝きに焦点を当てています。

3. 季節の移ろいと、自然の美しさが描く人生の機微

河瀬直美監督ならではの、自然光を多用した美しい映像と、風の音や鳥の声といった環境音が、
登場人物たちの感情や物語の移ろいを繊細に表現しています。
桜の美しさや、木々のざわめきなど、自然の描写が、人生の喜びや悲しみと深く結びつき、映画全体に詩的な深みを与えています。